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札幌高等裁判所 昭和47年(う)354号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

理由

本件控訴の趣意は弁護人猪股貞雄提出の控訴趣意書に記載されたとおりであるからここにこれを引用し、これに対しつぎのように判断する。

論旨は要するに、原判決は、被告人が大谷三郎に昭和四六年一一月三〇日、同四七年三月二五日に各貸付けた金員の超過利息額を算定するにあたり、右各貸付金担保のための抵当権設定費用をこれに含めているが、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律五条五項により利息とみなされる金員は、貸主の所得に帰するものに限られるべきであるから、費用の実質を有する右抵当権設定費用を利息とみなした原判決には、右法条の解釈を誤り、ひいては判決に影響を及ぼすことの明らかな誤がある、というのである。

よつて判断するに、一件記録によれば、原判決が被告人の大谷三郎に対する所論貸付金の超過利息額を算定するにあたり、右貸付金担保のための抵当権設定費用をこれに含めていることは所論指摘のとおりである。しかし、同法五条五項にいう貸主が「その貸付に関し受ける金銭」とは、同法条の立法趣旨およびほぼこれと同時期に制定された利息制限法三条との規定内容の相違等にかんがみると、およそ当該貸付行為に関連して貸主が受領する金銭の一切をいい、所論のように、実質的に貸主の所得に帰すべきものであるか否かはこれを問わないものと解するのが相当である。原判決が所論抵当権設定費用を右五条五項にいう利息とみなして、これを超過利息額に含めて算定し同条一項を適用したことはまことに正当であり、原判決には所論のような法令適用の誤はない。なお所論は、抵当権設定契約における登記費用は元来借主が負担すべきものであるというが、みなし利息の範囲を前記のように解するかぎり、右登記費用の負担者がいずれであるかは本件犯行の成否になんら消長をきたすものではなく、主張はそれ自体失当といわねばならない。論旨は理由がない。

よつて、刑事訴訟法三九六条により本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。

(岡村治信 神田鉱三 宮嶋英世)

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